VI.化学療法(抗がん剤治療)

①初回治療の化学療法

表1 頭頸部がんで化学療法を受けるために

表1 頭頸部がんで化学療法を受けるために

 従来から頭頸部がんの治療の基本(標準的治療)は手術と放射線治療、またはこれらの治療の併用とされています(表1、2)。

表2 根治手術可能な進行頭頸部がんに
対する治療の形態

表2 根治手術可能な進行頭頸部がんに対する治療の形態

 しかし、これらの治療では頭頸部進行がんの生存率の向上には限界があるため、最近は最初の治療(初回治療または一次治療)から化学療法を加えた治療形態が行われる場合も増えています(表3)。これは世界で報告された信頼性の高い論文を用いて、多くの症例を解析した結果に基づいています(EBM: Evidence Based Medicine)。

表3 頭頸部がんの化学療法

表3 頭頸部がんの化学療法

 化学療法を加える方法には次の2種類があります。

1)導入化学療法(Induction Chemotherapyまたは、NAC: Neoadjuvant Chemotherapy)

表4 初回(一次)治療の化学療法の特徴

表4 初回(一次)治療の化学療法の特徴

 手術や放射線治療など他の全ての治療に先行して化学療法を行う方法です。導入化学療法の目的は①強力な化学療法を先行することによって腫瘍の退縮を図り、その後の根治治療である手術や放射線治療の治療成績を高める、②導入化学療法によって腫瘍が極めて退縮した場合は手術を避け、放射線治療で根治を図り、機能(臓器)温存を図る、③強力な化学療法であるため既に存在すると考えられる微少な遠隔転移細胞を根絶するなどです(表4)。

 導入化学療法で用いられる化学療法剤としてはシスプラチン(CDDP)5-フルオロウラシル(5-FU)の併用療法(PFまたはCF療法)が頭頸部がんの標準的化学療法とされています。しかし最近ではこの2剤にタキソテール(Taxotere)を加えるTPF療法がPF療法よりも生存率や機能温存率が優るとの報告が出始めています。

2)化学療法・放射線治療同時併用療法(Concurrent Chemoradiotherapy: CCRT

表5 初回(一次)治療の化学療法の特徴

表5 初回(一次)治療の化学療法の特徴

 放射線治療に加えて抗がん剤治療(化学療法)を同時におこなう方法です。化学療法・放射線療法同時併用療法の目的は、①放射線療法に強い化学療法併用を加えることで化学療法と放射線治療のそれぞれの抗腫瘍効果で強力な治療効果を得る。②放射線治療の効果を高めるための増感剤として化学療法を用いる、③放射線治療との併用で根治を目指し、手術を避け、機能や臓器温存を図ることなどです(表5)。

表6 ドセキタセル・シスプラチン・5-FUによる
3剤化学療法の方法

表6 ドセキタセル・シスプラチン・5-FUによる
3剤化学療法の方法

 用いられる薬剤の代表的なものにはシスプラチン(CDDP)がありますが、同時併用による有害事象(副作用)を考え、投与量を減らしたPF療法やTPF療法も用いられています(表6)。いずれの治療方法でも1コース施行による抗腫瘍効果を判断することが大切で、1コースで効果がない化学療法や、1コース併用時点での放射線治療の効果がない同時併用療法を漫然とつづけるべきではないと考えられています(表7)。

表7 進行頭頸部がんのVVRT主体の治療

表7 進行頭頸部がんのVVRT主体の治療

 強い多剤併用化学療法はそれだけでも有害事象が出現するうえ、さらに放射線治療との併用療法では粘膜炎、皮膚炎、骨髄抑制などがさらに強く出現するので注意が必要です。とくに放射線治療との同時併用で生じる粘膜炎は疼痛を伴うもので、鼻から挿入する胃チューブや腹部から胃に直接栄養の管を挿入する胃瘻が栄養管理のためには必須となります。

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②一次(初回)治療後の維持化学療法

 一次治療で腫瘍が完全消失あるいは完全摘出されたと考えられる症例でも進行がんでは15%近くの症例で再発が認められます。一般的に治療後の再発が起こる場合は、原発部位の再発や頸部リンパ節転移は1年以内に80%前後、また2年以内に80%前後の肺、肝、骨を中心とした遠隔転移が観察されます。こうした再発を防止するために、再発のリスクの高い進行がんの根治治療後も化学療法を継続する維持化学療法が行われることがあります。強力な化学療法を治療後半年近くまで続ける方法と、本邦で開発された5-FU系内服剤の半年以上の投与方法があります。その治療効果はまだ確立したものではなく今後、明らかになると考えられています。

 進行頭頸部がんの予後は医療の進んだ現在でもまだ悪いため、抗がん剤を含めた様々な治療を総合的に用いる(集学的治療)治療形態が望ましいと考えられます。

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③代表的な抗がん剤

1)シスプラチン(CDDP)

【概要】

構造の中に金属の白金を含有し、白金(プラチナ)製剤に分類されます。がん細胞のDNAと結合して複製を妨げ、がん細胞の分裂や増殖をおさえることで抗腫瘍効果を発揮します。高い抗腫瘍効果を持ちますが、副作用も強く特に腎機能障害が大きな問題です。

【重大な有害事象】

【その他の薬物有害事象】

2)5-FU(5-フルオロウラシル)

【概要】

 代謝拮抗剤に分類されます。がん細胞の分裂や増殖の際に必要な物質であるピリミジンに似た構造で、ピリミジンの代わりにがん細胞に取り込まれることでDNAの合成を阻害して抗腫瘍効果を発揮します。一般的な副作用は悪心・嘔吐・下痢など消化器系の症状です。

【重大な有害事象】

【その他の有害事象】

3)ドセタキセル(Docetaxel)

【概要】

 タキサン系薬剤に分類されます。がん細胞の分裂に必要な微小管の働きを阻害することにより、がん細胞の分裂を妨げることで抗腫瘍効果を発揮します。副作用としてショックなどの過敏症状や浮腫が認められます。

【重大な有害事象】

【その他の有害事象】

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